連日のようにNFTに関する議論はつきません。
特に仮想通貨を中心とするブロックチェーン技術に関しては環境問題との関連もあげられています。
今回はNFTアートは環境に悪いのか、ただのjpeg画像であるかなど、よく議論される問題点に関して考察していきます。
目次
NFTアートは環境に悪いのか7つの問題点を考察
NFTアートには様々な問題点が言及されています。
客観的な視点からデータや事例も交えてわかりやすく解説していければと思っています。
今回取り上げる問題点は下記の7つです。
- NFTアートは環境に悪いのか
- NFTアートはただのjpeg画像である
- NFTアートはコピペできる
- NFTアートはポンジスキームである
- 詐欺だらけのNFTプロジェクト
- NFTはマネーロンダリングに使われる
- NFTはただの投機である
上記7つの問題点についてそれぞれ考察していきましょう。
NFTアートは環境に悪いのか
NFTアートやビットコイン、イーサリアムなどはブロックチェーン技術を根幹としています。
ブロックチェーンは中央銀行など人力で監査されない分散化された金融と言われていますが、もちろん監査されないで放置されているといくらでも詐欺られてしまいます。
そういった悪意の使用者に対抗するために、マイナーと呼ばれる人たちによって取引の整合性を精査しています。
- 取引が行われる
- マイナーが台帳に追記
- 正しい取引かどうか多数のPCで同時に計算
簡単に言うと上記の通りで、この時に貢献した人に報酬が支払われます。
これがガス代(取引手数料)として取られるわけですね。
ガス代についてはNFT取引をはじめブロックチェーンアプリを使う時には必須の知識になるので気になる人は下記から見てみてください。
【無料あり】NFTアート取引で掛かるガス代とは?相場と安く抑える方法解説
大量のPCを使って計算をするから環境に悪いと言われているわけですが、ビットコインの電力消費量は世界の電気消費量の0.15%と「Bitoin miner coucil」にて報告されています。
また、NFTで使用されることの多いイーサリアムはビットコインの5分の1と言われています。
イーサリアムは銀行の電力消費量の10分の1
仮想通貨は「通貨」なわけで、他の通貨や投資対象と比較してみます。
上記のレポートでは、ビットコインの電力消費量は金や銀行システムの電力消費量の50%以下と報告されています。
つまりイーサリアムは銀行や金の10%以下の電力消費ということになり、NFTは多く見積もっても5%ほどでしょう。
また、業務に関わる人の数も銀行の方が多いことは明らかで、二酸化炭素排出など環境には悪いことがわかります。
銀行や金に関する電力消費量はリアルタイムに追うことができませんが、仮想通貨に関してはリアルタイムで追うことが可能です。
「Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index(CBECI)」はケンブリッジ大学が公開したツールで、ビットコインの電力消費量をリアルタイムに追跡しています。
データを追跡できるということは改善も可能であることと同義ですよね。
結論として、NFTは電力を消費するが環境問題への影響は軽微であると考えられます。
また、イーサリアムは現状のマイナーによる整合性の担保を行うPoW(Proof of Work)からより消費電力の少ないPoS(Proof of Stake)へ移行を始めています。
将来的によりエコな通貨システムになることは容易に予想できますね。
NFTアートはただのjpeg画像である
そもそも、現状の日本ではデジタル資産の所有権は認められていません。
つまり、NFTに関しても仮想通貨に関してもSNSアカウントに関しても日本において所有しているとは認められていません。
そういった意味でいうとデジタル関連ビジネスの多くは所有権のない架空のビジネスであるということになります。
つまり、インターネットそれ自体が価値のないものといった考え方ですね。
少し脱線しましたが、現状日本でデジタル資産に関して所有権は認められていないにも関わらず、税金は払わなければならないといった状況になっています。
確かに所有権がないことにより、ただのjpeg画像になってしまいます。
「ただのjpeg」という人はフルオンチェーンのNFTを知らない、もしくは指していないことがほとんどです。
NFTはフルオンチェーンならば所有できるのか
ただOpenseaにアップロードされた画像は、Openseaが消えると消滅する「Openseaに所有されたjpeg画像」とも考えられます。
しかし、多くの主要プロジェクトはブロックチェーン上に刻まれたフルオンチェーンのNFTです。
ブロックチェーン上に刻まれていると言うことは、Openseaが消えても削除されることはなく、永遠にブロックチェーン上に存在します。
ブロックチェーン上に存在するNFTに所有していることが刻まれているのならば、所有しているといって良いかもしれません。
有体物でなければ確かに所有している感はありませんが、SNSアカウントもSuicaの残金もKindle本も変わりません。
それらと比較すると、分散化されておりプラットフォーマーにアカウント停止される恐れがない分よりデジタル資産の所有には近いものであると考えられます。
NFTアートはコピペできる
よく、NFTを自慢しているTwitterアカウントに「おまえの1000万円のアートコピペしてやったぜ」とクソリプがつきます。
よくある光景ですよね。
NFTアートはコピペできるから価値がないかと言うと、コピペできる分価値が上がるとも考えれます。
NFTはコピペされればされるほど価値が上がる
多くの人がNFTをコピペしてSNSなどで貼り付けると、そのNFTは有名になっていきます。
有名になればなるほど、そのNFTに価値は上がりますよね。
ミームとして使われてきた画像は軒並み価値が上がり、NFTとしても超高額の値段がついているものがあります。
コピペされればされるほど価値が上がることを理解できずに、NFTアンチの人がコピペしてくれるのは面白い点です。
NFTアートはポンジスキームである
昔チューリップが珍しい時期に球根が値上がりしたことがありました。
1630年代の話ですが、綺麗で珍しい花をつける球根は超高値が取引され、年収の10倍以上の価格で取引されることもありました。
確かにNFTアートの相場は2000年代初頭のITバブルと酷似しています。
ITっぽいビジネスをしている風のスタートアップに大量の投機マネーが流れ込み、バブルがはじけたことで少数の本物のIT企業のみが残りました。
テクノロジーの動きは常に似ていて、新たなビジネスチャンスが生まれるとそこに投機マネーが集中します。
そして淘汰され、本物のみが残るのはいつの世も同じです。
実際にポンジスキーム的な動きをするNFTプロジェクトも少なくありませんが、時間が経つとどのプロジェクトが本物のNFTプロジェクトであったか分かることでしょう。
詐欺だらけのNFTプロジェクト
NFTプロジェクトは詐欺だらけだと言われることが多いです。
そして、実際にも多いです。
2018年のICO詐欺や2020年から2021年のDeFi詐欺、そして2021年のNFT詐欺。
インターネットも黎明期からフィッシング詐欺やクリック詐欺など、新たな詐欺手法のオンパレードでした。
インターネットは詐欺の温床かというと、そういうわけでもありませんよね。
詐欺師はなんでも詐欺に使います。
銀行口座から金に困った人の個人情報、不動産から保険まで金のある場所は全て詐欺の対象になります。
詐欺の見分け方は消費者が知識をつけ、業界全体で対応していく必要がありますよね。
NFTと詐欺については別の記事でも詳しくまとめているので、ぜひ見てみてください。
NFTはマネーロンダリングに使われる
NFTはマネーロンダリングに使われるとも言われています。
NFTをマネーロンダリングに使用すると、下記の手順を踏む必要があります。
- NFTを仮想通貨に変換
- 仮想通貨を個人の口座に入金
仮想通貨は全ての取引が透明で、追跡することが可能です。
対して現金は追跡することはできますが、限度があります。
キャッシュレスや仮想通貨なら追跡することが可能で、マネーロンダリングは現金の方が容易です。
現に日本でも水商売の給与などは現金で支払われ、納税することは稀ですよね。
下記の記事でも仮想通貨の現金化に困って捕まったニュースについて解説されているので、マネーロンダリングについて興味がある人は読んでみてください。
仮想通貨、盗んでも現金化困難
→https://jp.reuters.com/article/stolen-cryptocurrency-idJPKBN2KF0FF
NFTはただの投機である
確かにNFTは投機目的、転売目的で購入する人が多くいます。
以下、Wikipediaの引用です。
投機は投資という行為の一形態であり、両者を分けるのは主にその言語を使う者の主観によることが多い
本来投機はリスクをより少なくする目的でおこなうものとされ、価格が暴落しているときにあえて買い向かう、高騰しているときに売り向かう行動は、中長期での平均リターンを確保するためのリスクヘッジ(危機回避)である場合が多い
投機商品にはどのようなものがあるかというと、下記の通り。
- 株式
- 商品
- 不動産
- 通貨
- 債券
- 仮想通貨
一定規模のマーケットが存在し、売買可能なものが存在するところは全て投機市場です。
ある意味会社で働くサラリーマンで、「短期的な金やスキル向上」を考えている人は自分の時間を投機しているとも言えますよね。
主観の話なので、深くは追いませんがNFTを短期的に売買して転売益を稼ぐ人は投機家であり、Web3の未来を信じてNFTを売買している人は投資家であると言えます。
「NFTは投機」はマイナスのイメージがある言葉ですが、市場の中で存在する当たり前の行為といった認識です。
今後のNFTアートの問題点とWeb3の未来
ここまでNFTの問題点について考えてきました。
悪いことばかりでなく、NFTには未来があるとも考えられます。
ここからはNFTによってどのように社会が変わるのか、どのように利益を享受することができるのか考えていきましょう。
NFTによるクリエイターの搾取からの開放
イラストレーターやクリエイティブを作成するクリエイターは、下請け構造の末端に位置することが多く、常に搾取の対象になっています。
これは特に日本の商習慣である「中抜き」に起因する問題ではありますが、NFTは搾取され続けてきたクリエイターたちを開放する手段になりえます。
具体的には、今までクライアントワークでしか収益を産むことができなかったクリエイターたちが直接消費者にクリエイティブを届けることができ、NFTによって新たな収入源を作ることができるようになりました。
NFTのおかげでここ10年のキャリアで稼いできた額以上を1年で稼ぐことができた人もいるなど、本来作りたいクリエイティブに価値がつくようになったことは良いことですよね。
クリエイターを直接応援する仕組みとしても、クリエイターとファンをつなぐ仕組みとしてもNFTは活用されます。
日本の中抜き構造からクリエイターを開放する一助になっていることは明白ですね。
スタートアップにおける資金調達手段としての台頭
スタートアップが資金調達する手段として、現状VCを入れて株式によって増資をすることがほとんどです。
実際に実現可能かはわかりませんが、下記のようなNFT利用方法が考えられます。
- NFTを販売
- 購入者に対してNFT数に応じて投票権を割り当て
- 方針策定時にNFT保有量に応じて決定
株式を希釈せずに、企業や政党の方針を決定できるようなNFTを発行することで、新たな資金調達手段にすることも可能であると考えられています。
NFT保有量に応じてNFTのエアドロップを実行すれば配当に相当するものを作り出すことも可能(価値がつくNFTであれば)で、投資信託や株式と同様新たなプラスサムゲームを生み出すこともできるのでは、と思われます。
スタートアップや政治資金の調達手段としての活用事例が今後増えてくることは期待です。
IPを多数保有する日本の再興
IPとは、知的財産のことで日本ほどIPを保有している国はありません。
世界的に人気でミームとしても使われる漫画のナルトやワンピースをはじめとするアニメや漫画文化、ゲームを保有している日本の再興のチャンスがNFTにあります。
Web1.0においてGoogleのような検索エンジンを、2008年まで著作権の問題で国内では開発できませんでした。
またWeb2.0ではGAFAが台頭し、日本は圧倒的に乗り遅れました。
ここにきてWeb3の時代で世界一IPを保有する日本に注目が集まっています。
Web3において仮想通貨関連の優遇、NFTやDeFi、DAO領域での規制緩和が急がれる状況ですが、IP保有国としての圧倒的アドバンテージがあればまだ戦えるでしょう。
IT化に完全に乗り遅れて後進国となりつつある日本が再興するチャンスがNFTにあります。
今後の日本の動きに期待です。
web1、web2、web3の世界の動きについては下記記事で詳しく解説しているので興味がある人は合わせてお読みください。
→Web3.0とは何か?わかりやすくWeb2の歴史から紐解き徹底解説
NFTに問題点はあるが未来は期待できる
NFTに問題点が多くあることは明白です。
Web2のインターネットはECと広告の革命でした。
新聞やテレビといった旧来の広告以上に市場規模の大きい広告市場が立ち上げられ、ステマなど新たな問題も生じました。
Web3は通貨革命だと言われています。
Web2で損を被るのはマスメディアといった広告企業でしたが、Web3では対国の巨大権力と相対することになります。
銀行口座保有率はアジアであっても人口1億人近いベトナムで30%、フィリピンでも34%です(https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20210423/report.pdf)。
銀行はなくてもスマホを持っている人がほとんどであり、仮想通貨やNFTが一般化することで世界の経済格差や送金、流動性がさらに高まり発展することも考えられますよね。
通貨革命が起きることで世界が享受するメリットは多く、未来にも期待できるのではと思います。