メタバースに多くの企業が進出し、メディアでもSNSでも連日のように話題に上がります。
そんな中で「セカンドライフ」というキーワードがよく登場しますよね。
セカンドライフとはどんなものなのか、今騒がれているメタバースとセカンドライフの違い、メタバースはセカンドライフの二の舞になってしまうのかなど考察していきます。
目次
早すぎたメタバース「セカンドライフ」とは?
2003年にサンフランシスコの企業リンデンラボがリリースしたセカンドライフ。
「ユーザーによって創られた、インターネット最大の3D仮想世界」と紹介されています。
人がヘッドデバイスなどを使って仮想空間に移動し生活する世界をメタバースを言いますが、セカンドライフでは全てが実現されています。
具体的には下記の通りです。
- デジタルコンテンツの売買
- テキストと音声によるコミュニケーション
- 社会経済シミュレーション
衣服やアバター、不動産や景観などありとあらゆるものをユーザーが作成でき、それらはセカンドライフ内で売買が可能です。
セカンドライフの世界の中でアバター同士がリアル世界と同様に生活しており、セミナーや企業の営業、DJイベント、カフェの経営などビジネス活動をしている人も多く存在します。
博物館や障害者支援活動、ショッピングモールやコミュニティ放送局など、様々な活動やビジネスがユーザーによって営まれており、セカンドライフ内で得た収益はドルに換金することも可能です。
まさにメタバースですよね。
さらに詳しくセカンドライフがどのように発展していったのか見ていきましょう。
メタバース「セカンドライフ」の登場と歴史
2003年にメタバース「セカンドライフ」が公開されました。
そして土地のオークションが開始され、ユーザーが集まり実際に生活をし始めます。
今のメタバースサービスの土地NFTの販売となんだか似ていますね。
日本で話題になったのは2007年。
経済誌などがこぞってセカンドライフを取り上げ始めました。
3D仮想空間という目新しさから、企業は広報活動の場として利用し始めます。
そして、電通をはじめとする広告企業が積極的に取り上げはじめ、
- 土地運用で一攫千金
- 低予算の広告宣伝の場
- リアルマネートレード
といった宣伝文句からPCに興味のないユーザーまで巻き込んでブームになります。
それから半年後、広く定着することはあり得ないとされ、広告効果をあまり見込めなかった企業が徐々に撤退し始めます。
当時セカンドライフを活用していたのはブックオフやソフトバンク、Mixiなどネット活用を主戦場とする企業やオンラインECを展開している企業ですね。
2年後の2009年電通も撤退し、セカンドライフ熱も冷めていきました。
2013年にリンデンラボがセカンドライフ10周年として公表したデータによると月に1回以上利用するユーザー数(MAU)は100万人以上、毎月の新規登録ユーザー数は40万人、バーチャル商品の1日あたり取引高は120万ドル。
10年間で取引された額は32億ドルとされています。
日本では2009年で企業が撤退しましたが、日本人ユーザー数は全体の5%ほど。
その4年後に公表されたデータでも毎月40万人の新規登録があり、デイリー1億円以上の取引がされているというのは驚きです。
実際にセカンドライフというメタバース空間で生活をする人も多く存在しています。
セカンドライフで億万長者が生まれた
セカンドライフユーザーの主な収益源となったのが土地を開発、街を作る。
作った世界の不動産などを他のユーザーに貸し出すデジタル不動産業でした。
中でも有名になったのがメディアに大きく取り上げられた「アンシェ・チャン(アイリン・グレフ)」。
中国系の女性起業家で、仮想の不動産を販売することで100万ドル相当の資産を築きあげました。
ビジネスウィーク誌の表紙も飾り、「セカンドライフの最初の成功者」と取り上げられました。
リンデンラボが運営するセカンドライフ内では「リンデンドル」と呼ばれる通貨が使われています。
ドル→リンデンドル→ドル
上記の取引はPayPal経由で行われ、現実世界の通貨に変換が可能です。
確かに億万長者が生まれ爆発的にブームにもなりましたが、世の中に浸透するには至りませんでした。
セカンドライフが失敗した理由とは?
セカンドライフ自体サービスは今も存続しているので、厳密にいうと失敗したわけではありませんが、世の中に浸透するには至りませんでした。
考えられる理由は下記の3つです。
- 要求されるPCのスペックが高すぎる
- 操作が難しくUXが難解
- 同時期にSNSが始まった
セカンドライフは重たい処理もこなせるPCを所有している人のみがアクセスできる空間でした。
操作も難しく、広大な土地に放り出されて何をすれば良いのかわからないユーザー体験も敷居をあげています。
実は、セカンドライフがリリースされた2003年にFacebookもスタートしました。
もちろんFacebookよりも先にリリースされているSNSは多くありますが、結果としてSNSがWeb2時代の覇権を握り、メタバースはまだ早すぎたのかもしれませんね。
Web1からWeb3までの時代背景と流れについて下記記事で詳しく解説しているので興味のある人は合わせて読んでみてください。
理解が深まるかと思います。
→Web3.0とは何か?わかりやすくWeb2の歴史から紐解き徹底解説
セカンドライフと今のメタバースの違いとは?
今話題になっているメタバースは、セカンドライフでほぼ実現できていました。
では、今回のメタバースブーム的な流れはセカンドライフの当時とどのように違うのでしょうか。
億万長者が現れたことから注目を集め、企業がこぞって出典して広報宣伝の場として活用する…そして2年後には効果をあげられず撤退する。
同じような流れを辿りそうにも思えますが、違いはあるのか。
注目すべき点は下記の3つです。
- ブロックチェーン技術の台頭とNFT
- 全ての人が持っている小さなPCであるスマホ
- VR・AR技術の進歩とリアルな仮想現実の実現
順番に説明していきます。
ブロックチェーン技術の台頭とNFT
当時のセカンドライフにはなかったのがブロックチェーン技術。
セカンドライフのメタバース内で流通していたリンデンドルは外に持ち出しても使うことはできませんよね。
2022年現在、ブロックチェーン技術を用いた分散金融サービスとして資産運用することができるDeFi、プレイして稼げるP2Eゲームなどアプリケーションが充実しています。
また、Twitter創業者のジャックドーシーが創業した決済サービスのSquareへの暗号通貨決済の導入をはじめとし、決済サービスで日常的に暗号通貨が使えるように。
通貨に必要な要素としての流動性が担保されなかったリンデンドルと比較し、ブロックチェーン技術の台頭した現在とは大きな違いがありますよね。
全ての人が持っている小さなPCであるスマホ
当時セカンドライフは一部のPCを所有している人のためのメタバースでした。
世の中に浸透するITサービスはスマホで利用されるものがほとんどですよね。
理由は簡単で、ほぼ全ての人が持っているから。
スマホは携帯の機能がついてる高機能なPCであり、カメラですよね。
ゲームアプリをはじめとして、高画質な動画など重たいデータでも現代のスマホは簡単に処理することが可能です。
4Gや5G技術といった無線通信システムの進化も進み、どこでも超高速のネットを楽しむことができます。
当時は高機能なPCを持つ一部のユーザーのみしか触れることができなかったメタバースですが、現代では全ての人が触れることができる点は大きな違いです。
VR・AR技術の進歩とリアルな仮想現実の実現
Meta社が買収したVRデバイス開発企業のOculus。
そして、2021年には100億ドルの研究開発費を投じて開発を進めています。
100億ドルはトヨタの年間研究開発費と同じ規模で、いかにメタバース開発にかけているのかがよくわかります。
現状はまだVRデバイスは重く、長時間つけていられるものではありません。
今後メガネ型のARデバイスや軽いVRデバイスがリリースされるようになると、メタバースが現実に普及するようになるだろうと予想されています。
特にARは新たな購買行動にも期待されています。
例えば、家電を買いに店に入った瞬間にARデバイスと購入履歴がリンクし、買い替え対象の商品がどのフロアにあって、価格がどのくらいといったようにバーチャル店員がサジェストしてくれる、といった世界を実現可能です。
家にいながらARで試着し、そのまま部屋に置いた時のサイズ感をメタバース内にある部屋と比較してメタバースのショップで購入する、といった購買行動も実現できますよね。
セカンドライフがリリースされ、一過性のブームとなった当時と比べると、現代の技術の進歩は大きな違いであると言えるでしょう。
メタバースに興味がある人は、ぜひ一度今話題になっているメタバースサービスにログインしてみてください。
無料でメタバースに入ることができるので、一度体験してみるとより理解が深まるかと思います。
下記記事で始めかたについて解説しているので参考にどうぞ。
結局メタバースはセカンドライフの二の舞になるのか?
メタバースとセカンドライフ、結局あまり違いはないのでは?
二の舞になって一過性のブームで終わるだろうと考える人も多くいますよね。
実際のところ、日本ではNFTを取引したことのある人は2000人程度(Openseaウォレット数)、暗号通貨を取引したことのある人は2%程度です。
まだメタバースはブームですらなければ、黎明期でもないレベルです。
Meta社をはじめとする巨大テック企業による巨額の研究開発費への投資や、10年前と異なる技術を背景に考えると、メタバースの実現も近いのではとも考えられます。
しかし、もちろん問題点も多く存在しており、今すぐにメタバースを利用するのが当たり前になるとは考えづらいです。
3~5年後くらいに廉価でハイスペックなデバイスの登場、暗号通貨が一般化するなど動きがあればメタバースも浸透してくるのではと考えています。
詳しくは下記の記事でも解説しているので、合わせてご覧下さい。
→メタバースが今流行らない3つの理由【セカンドライフの二の舞】